齧り付いて、内出血

どさっと崩れ落ちるように久世がソファに座る。


「おめでと。」


ぼそっと、無機質な声がした。

おめでと?なんかあったっけ。


「時計、12時。」

『単語で言われてもわからん。』

「――誕生日。」


首にかけたタオルで頭をがしがし拭きながら、なんてことないように言った。

これ、お祝いされてる…?

声色からは祝福の色は伺えないけど、‘おめでとう’って一応お祝いの言葉だよね?


「はたち、だな。酒に煙草…あー駄目。お前どっちも経験済みだ。」

『う、うん。』

「新しいこと教えてやろうと思ったのに、さ。」

『う、うん。』

「それしか言えねえのか、頼。」


‘より’

久世の発音は特別だ。

名前を呼ばれただけで心臓が跳ねあがるから。

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