齧り付いて、内出血

私が久世に普通の会話を投げかけられない理由はひとつには関係ないと言われたら嫌だから。

でもそれよりも大きな理由がある。

久世は敏腕弁護士、クライアントの要望をきくのを生業にしてる。

弁護士って話も上手いけれど、それ以上に人の話を聞いて理解するプロ、だと私は思ってる。


だから駄目なんだ。

話せば話すほど久世は私を理解して、すぐにこの気持ちにたどり着いてしまうだろう。

それが嫌だ。


何も言ってない今でさえ図星をついてくるのに、話なんてしたら終わりだ。


「明日、って言ってももう今日だけど。」

『うん。』

「どこか、出掛ける?」


天井を見つめて寝る?みたいな乗りで聞いてくる。

これってどういうことなんだろ。

デート…みたいな?

いやいやいや、そんな、まさか。

< 25 / 91 >

この作品をシェア

pagetop