齧り付いて、内出血

ぱちん、と

何かが弾ける音がして、次の瞬間私は久世の胸を力一杯叩いていた。


「―-頼?」


どうして、どうしてこんな時までそんなに冷静なの?

私のことなんて眼中にないから?

泣いてようが怒ってようが関係ないから?

たまには私の前で動揺してみせてよ。


『久世、久世、久世!』

『岡部さんをごはんに連れて行ってあげたんだ?』

「頼。」

『これからも連れて行ってあげるの?私はどこにも連れて行ってもらえなかったのに!まともに外を一緒に歩いてくれたことさえなかったのに!』


「…。」


『名前だって教えてくれなかった。何度も何度も抱き合ったのに、私久世のこと何も知らない!』

「…お前、何言ってんの。」


頭上から降ってくる冷静な声に、さーっと血の気が引いていく。

そうだ、私何言ってるんだろう。

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