齧り付いて、内出血

帰るついでに送ってやる、と言われて私は彼の車に乗せてもらった。

発車してしばらくして、彼は急にクックッと喉の奥で押し殺したように笑い出した。


「頼ちゃん、男と付き合ったこと、ないだろ。」

『え?』

「知り合って間もない男の車に簡単に乗らないほうが、いいですよ。」


正直言ってからだが強ばった。

ただでさえ特殊な空気を持った人だから、犯されるを通り越して殺されるんじゃないか、みたいなことが一瞬頭をよぎった。

でも教授と親しいみたいだったし、うん。


「あ、俺は別に何もしないよ。」

『なんだ、驚いたじゃないですか。』

「のわりには冷静だな。――で、やっぱり男と付き合ったことだろ?」

『ない、ですけど。』

「へえ、冴えてるな、俺。」


…なんだこの人。

< 44 / 91 >

この作品をシェア

pagetop