齧り付いて、内出血

馬鹿にされたようで腹が立ってきたから『全く興味ないわけじゃないんですよ』と言い返した。


「へえ。」

『やることあって忙しいので恋は面倒なだけで。でもみんなしてるのに自分だけしないのもしゃくじゃないですか。だからその先に興味があります。』

「セックス？」

『まあ、そうなりますね。終着点を経験してしまえばその過程にある恋愛も経験したことにできるんじゃないかって、思うんですけど。』


「なるほどねえ。」


少しの沈黙の間、ちょっとだけ後悔。

今までこんなこと誰にも言ったことなかったのに、ぺらぺらと恥じらいもなくいってしまってひかれたかなって。


だけど、彼の返答は予想の斜め上をいった。


「教えて、あげましょうか。」

口元にゆるりときれいな弧を描いて、ニヒルに笑んで。


「恋嫌いの頼ちゃんに、恋の終着点を。」



――きっかけをつくったのは久世。受け入れたのは私。

終着点だけで良かったのに、結局久世はお節介にも過程まで教えてくれたのだった。