齧り付いて、内出血

薄茶の瞳が力強く私を見据える。

怖いくらいの静けさ。


『離して…。』

「聞こえない。」


聞こえてるじゃん。


「頼、言ってみろ。どうしてほしいか。」

『…。』


言えない。怖くて言えない。

今私は何をしてほしいのか、考えるのが怖い。


「好きだ。」


…え?


「好きだ、好きだ、好きだ。」


やめて、その顔でそんな酷いこと言わないで。


「好きだ…」

『久世!』


叫んだ。


むかつくくらい冷静で、いつも通りの意地悪な顔で、その言葉を言われたかったんじゃない。

私が抵抗するから、好きだと言えばそれでおとなしくなるとでも思ってるんだ。

いくら恋愛初心者でも、それくらいの判断がつかないほど無知じゃない。

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