齧り付いて、内出血
すると。
久世が右手の甲で横を向いた私の左頬をさわさわと撫でてきた。
それは、これから事に及ぶためのものではなくて、単なる純粋な愛撫だった。
優しい手つきのせいで鼻の奥にツンと痛みが走る。
泣か、ない。絶対に。
こんな時、泣きたい衝動を堪えようと思ってやっぱり堪えられてしまう私は言葉だけじゃなくて態度まで不細工だ。
さわさわ、流れるような手つきで
さらさら、
『っ!』
拘束されていない左手で、乱暴にその手首を掴んだ。
何でそんなことしたのかわからない。
理性ではどうしようもない衝動――としか言いようがない。
「…痛え。」
ぼそり、とそう呟くのが聞こえた。
もっと痛くなればいいんだ。
「っう…!」
がぶり。
がぶり。
私みたいに、痛くなってよ久世…。