苦恋症候群
「なんでですか、なんで、……っあ、あのひと、あたし、には──ッ、」
私を、責めるような口調なのに……葉月さんはどこか深く傷ついた表情で、今にも泣き出しそうだ。
その顔を間近に見ながら、小さく息を吐いた。
「……ちょっと、落ち着いてよ。黙って聞いてれば、なんなの? 私と三木くんが、セックスしたって?」
「……ッ、」
あえて具体的な単語を出すと、葉月さんは怖気付いたようにハッとした顔でこちらを見た。
そんな彼女を毅然と見返しながら、私は続ける。
「あのね、そんなのしてないし、そもそも……たとえしてたとして、それって葉月さんにとやかく言われる筋合いある?」
「な……」
「三木くん、前に彼女いないって自分で言ってたよ。それってつまり、葉月さんが彼女ってことでもないってことでしょ?」
私が放った質問は、まさに図星だったらしい。うつむいた葉月さんが、ぎゅっと両手のこぶしを握りしめる。
……あーあ。はたから見たら今の私、完全に後輩いびりしてる意地悪な先輩だよなあ。
頭の片隅でうんざり考えながら、それでも私は最後までキッパリと言い切った。
「あなたが、勝手に三木くんのことをすきなだけでしょう。こんなところで私のこと責めてる暇があったら、女磨くなり仕事で結果出すなり、三木くんの目に留まるような女になりなよ」
私の淡々とした言葉で、カッと彼女の頬に赤が差す。
ああ、泣いちゃうかな。さすがにそう思ったけど葉月さんはぐっと下唇を噛みしめて、意外にも耐えた。
彼女はぺこりと乱暴に頭を下げ、持っていた折りたたみ傘も広げず外に飛び出していく。
葉月さん、見た目はふわふわしてていかにもか弱い女の子って感じだけど……意外と、根性はありそうだ。
そんなことを考えながらドアが再び閉じるのを、ぼんやり眺めていると。
「……森下さんって、実は結構おっかないですよね」
「ッ?!」
思いがけずすぐそばから突然声が聞こえて、びくりと肩をはねさせた。
私を、責めるような口調なのに……葉月さんはどこか深く傷ついた表情で、今にも泣き出しそうだ。
その顔を間近に見ながら、小さく息を吐いた。
「……ちょっと、落ち着いてよ。黙って聞いてれば、なんなの? 私と三木くんが、セックスしたって?」
「……ッ、」
あえて具体的な単語を出すと、葉月さんは怖気付いたようにハッとした顔でこちらを見た。
そんな彼女を毅然と見返しながら、私は続ける。
「あのね、そんなのしてないし、そもそも……たとえしてたとして、それって葉月さんにとやかく言われる筋合いある?」
「な……」
「三木くん、前に彼女いないって自分で言ってたよ。それってつまり、葉月さんが彼女ってことでもないってことでしょ?」
私が放った質問は、まさに図星だったらしい。うつむいた葉月さんが、ぎゅっと両手のこぶしを握りしめる。
……あーあ。はたから見たら今の私、完全に後輩いびりしてる意地悪な先輩だよなあ。
頭の片隅でうんざり考えながら、それでも私は最後までキッパリと言い切った。
「あなたが、勝手に三木くんのことをすきなだけでしょう。こんなところで私のこと責めてる暇があったら、女磨くなり仕事で結果出すなり、三木くんの目に留まるような女になりなよ」
私の淡々とした言葉で、カッと彼女の頬に赤が差す。
ああ、泣いちゃうかな。さすがにそう思ったけど葉月さんはぐっと下唇を噛みしめて、意外にも耐えた。
彼女はぺこりと乱暴に頭を下げ、持っていた折りたたみ傘も広げず外に飛び出していく。
葉月さん、見た目はふわふわしてていかにもか弱い女の子って感じだけど……意外と、根性はありそうだ。
そんなことを考えながらドアが再び閉じるのを、ぼんやり眺めていると。
「……森下さんって、実は結構おっかないですよね」
「ッ?!」
思いがけずすぐそばから突然声が聞こえて、びくりと肩をはねさせた。