苦恋症候群
「わりと仲良さそうね、あなたたち」

「まあ、俺たち同期なので。……森下さんの家の近くにあの時間いそうなの、誰だろ。マサトかな」

「……そう。つまり、私たちのことを見た葉月さんの同期っていうのも、イコール三木くんの同期なのね」

「そういうことです」



葉月さんと三木くんは同期、ね。

ああ、それであのコ、自分からしたら新参者の私が気に食わないわけだ。


同期のしつけくらいちゃんとしろ、と彼に言いたいところだけど、それはさすがに理不尽な気がしてやめておいた。

代わりに私は、隣に立つ三木くんに冷ややかぁな半眼で訊ねる。



「あのコの気持ちは、知ってたんだ」

「そうですね。『すき』、と以前言われてそのとき俺からちょっとした提案をしたんですけど、却下されまして。それからは本人からその言葉を聞いてないですが」



……なんとなく、その“提案”の内容がわかってしまった自分に嫌気が差す。

さしずめ“カラダだけの関係”だとか、そんな乙女心を踏みにじるようなものだったのだろう。

思わず呆れたような眼差しで、彼を見つめた。



「結構ヒドイ部類で、きみは最低だよね三木くん」

「ええまあ、性格良くはないでしょうね」



私の言葉に気を悪くした素振りも見せずあっさり返して、三木くんはガラス越しの外に目を向ける。

相変わらず、雨足が弱まる気配はない。
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