苦恋症候群
一気にまくしたてると、加山主任は一瞬ぐっと言葉に詰まったようだった。

けれど自分のプライドを傷つけられたのがよっぽど悔しいのか、顔を歪めながらまた噛みついてくる。



「あ、あんな古くさい小さな会社! 金を貸してやるだけの価値があるのか!」

「……何を思い上がってるんですか。ウチみたいなローカルな信用金庫は、ああいう小さな規模でやっている会社にこそ手を差し伸べるべきでしょう。金を貸してやる、という言い方はただの傲慢だと思います、加山主任」

「なっ、」



怒りを抑えた淡々とした俺の指摘に、主任はカッと顔を赤くした。

さらに1歩、こちらに踏み出してくる。



「おまえ! 上司にそんな口をきいていいと思ってんのか!」

「ここでの勤続年数は俺の方が上ですけどね。上司らしいところを見せていただければ、自然と言動も改めますよ、加山主任」

「ッい、いちいち嫌みったらしく名前を呼ぶな!」



ああ、頭痛がする。

真っ赤な顔で噛みついてくる目の前の“それ”が、まるで意志の疎通ができない宇宙人のように思えてきた。

自分は短気な方ではないけれど、この人と話していると、どうにもこみ上げてくる不快感を解消しきれない。

普段はあまり長く話すことはなかったが、今現在のこの押収で、ちゃくちゃくと俺の不機嫌度は増していた。
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