苦恋症候群
「三木くん、だいぶ嫌がらせされてそうだね」



言いながら控えめにこちらを見遣る森下さんの言葉に、俺は前を向いたまま答える。



「まあ、嫌がらせといいますか……かなり目の敵にはされてますけど」

「そっか……あの人、しつっこそうだもんね」

「ふ、しつっこそうって」



大真面目な表情で放たれたそれに、思わず小さく笑った。

なぜだか目を丸くしている森下さんへ、今度は視線を向ける。



「風邪ですか、森下さん」

「あ、えっと、違う……お、遅れて来た、花粉症かな」

「そうですか」



たぶん、俺に気を遣ってるのだろう。なんともトンチンカンなその回答に、また口もとが緩みそうになったのをなんとか耐えた。

持っていたコンビニのビニール袋を探って、取り出したものを森下さんの前に差し出す。
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