苦恋症候群
「ハイこれ、よかったらどーぞ」

「え……い、いいの?」



差し出した栄養ドリンクと俺を交互に見ながら、森下さんが訊ねた。

その遠慮がちな手に無理やり握らせて、俺はさっさと手を引っ込める。



「どうせもう1本ありますから。花粉症に効くかどうかは知りませんけど」

「あ、ありがとう……」



若干戸惑った様子で、それでもお礼を口にした彼女にうなずいてから、俺は立ち上がった。

つられたように森下さんも腰を上げる、けど。



「っわ、ひゃ……っ」



立ち上がったときに足がもつれたらしい彼女が、小さく悲鳴をあげる。

バランスを崩した身体はそのまま、振り返った俺に正面から倒れ込んできた。

とっさのことだったけどなんとか耐えて、俺はその身体を受けとめる。
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