苦恋症候群
「あれから、ちゃんと考えました。……我ながら、大人げないことをしたと思っています」



そう言ってじっと自分の膝を見つめている葉月さんを、少しだけ意外に思いながら眺める。

……あらら。このコ、結構いいコじゃないの。

しょぼんと肩を落とすその様子は、どこからどう見ても演技とも思えない。

心の底から自分の行いを反省しているような、そんな雰囲気だ。

三木くんが言ってた『葉月、いいコなんですよ』って言葉、今なら信用できるかも。


思わず、ふっと小さな笑みが漏れた。



「葉月さん、顔上げなよ」



私の言葉が届いて、彼女がそっとこちらへ視線を向ける。

相変わらず眉が下がったままのその顔に向かって、笑いかけた。



「私は大丈夫、気にしてないから」

「でも……」

「というか、むしろこっちがごめんね。別に何もなかったとはいえ、そりゃあ嫌だよねぇ。自分のすきな人の家に、他の女が行ってたらさ」



苦笑混じりのそのセリフに、ふるふる、困り顔の葉月さんは首を横に振る。

私がようやく目の前のカフェオレをひとくち飲むと、同じように彼女も、自分の紙コップに手を伸ばした。
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