苦恋症候群
驚いたことに、彼女の同期は入庫以来ひとりも退職した人がいないらしい。

この業界って結構厳しいとこあるから、辞める人もわりと多いんだけど……。

少ない人数で励まし合えるから、みんながんばれるのかな。



「三木さんは、なんか、初めから……男の人ってだけじゃなくて、ドキドキしたんです」

「……そっか」

「すきなんだって自覚するのには、恋愛経験値なさすぎて3年くらいかかりましたけど。でも、ずっと、すきで」



三木くん……こんなかわいいコに好かれてんのに、なにやってんの……。

すっかり葉月さんに情が移ってしまった私は、彼女を助けるつもりで口を開いた。



「でもさ、葉月さん。同期なら知ってるだろうけど……三木くんって、こう言っちゃ悪いけど時々かなり最低だよね?」

「わかってます。あたし前に、酔った勢いで三木さんに迫ったことあるんですけど」

「え」



あまりにも予想外だったその言葉に、思わずぽかんと口を開けてしまう。

そんな私を見て、葉月さんは小さく笑った。
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