苦恋症候群
「同期で飲み会したとき、あたし、すごく酔っ払っちゃって。同期のひとりが三木さんに、あたしのこと送ってやれって、言ってくれたんです」

「同期の人たちは、葉月さんの気持ち知ってるんだ」

「いえ……ひとりだけ、知ってます。……それで、あたしの家がそこから近かったので、歩いて送ってくれたんですけど」



きゅっと、葉月さんが、紙コップを握りしめた。

そのときの場面を思い浮かべているように、ゆっくりと続ける。



「今考えれば、馬鹿なことしたと思うんですけどね。……すき。ウチに来て。泊まってもいいからって、抱きつきながら言ったんです」

「……それで、三木くんは?」



促すと、葉月さんは私と目を合わせて、力なく笑った。



「『いいよ。でもこれから先、葉月のこと“そういうことする対象”としか見ないから』って、言われちゃいました」

「……ほんと棒金でぶん殴りたくなるような発言ばっかねあの男は……」

「あはは。森下さん、こわいですよ。……だから、自分もお酒の勢いで三木さんに迫ったことあるくせに、森下さんにあんなこと言って……ほんと、自分に呆れちゃいます」
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