苦恋症候群
「あ、そういえばおととい、ウチの支店の三木くん引継ぎに行ったでしょ。さとり会った?」
「ぶふっ」
同期である麻智が唐突に振ってきた話題に、ストローで吸いかけていたスムージーを思わず吹き出しそうになった。
なんとか堪えて口の中の甘い液体を飲み込むことに成功するけど、盛大にむせてしまう。
「うわっ、さとり大丈夫?」
「げほ……ありがと麻智」
差し出されたポケットティッシュを素直に受け取り、口元にあてる。
そういえば、三木くんって麻智と同じ永田支店だったっけ。
すごくデキる後輩くんがいるんだよねーって、去年彼女が今の支店に異動したときにぼんやり聞いた気がする。
「ああうん、三木くんね……会ったよ、ちらっとだけ」
「そっかそっか。事務部と審査部って、階は違うんだっけ? 三木くんが木曜に引継ぎに行くって聞いてたから、『事務部に私の同期がいるからよろしくね~』って言っといたんだよねー」
「……そうなんだ」
そっか。だから三木くん、私の名前知ってたのかな。
今となっては麻智、余計なことを……って、ただの逆恨みだよねこれは。