苦恋症候群
そう言って視線を落とす彼女に、私は何ともいえない気持ちになる。


やはり、三木遥は最低男でした。

こんなかわいいコが勇気を出して言ったことを、そんなひどい態度で一蹴するなんて。

……そこまで恋愛をしたがらない彼の考えてることも、多少気にはなるけど。



「それでも、すきなんだね」



ぽつりとつぶやいた私の言葉に、彼女はまたぼんやりキャラメルマキアートを見つめながら、うなずく。



「同期にも、散々言われました。『三木はやめとけ』って。『アイツは、おまえじゃだめなんだ』って。……でも、すきなんです。冷たくされても、すきなんです」



あたし、おかしいですか。

うつむきがちな、まるでひとりごとみたいな彼女のそれ。

私はただ、小さく首を横に振る。



「……わかるよ。恋って、そういうものだよね」



たとえ、叶わないって、言われても。

どうしようもないって、わかってても。

それでもまだ、もしかしたらって、思ってしまう。

このひとに近づきたいって、願ってしまう。

恋って……甘いだけじゃなくて、とても苦い。
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