苦恋症候群
葉月さんは、とてもまっすぐだ。

まっすぐだから私にも、正面からぶつかってきたんだね。


コーヒーショップを出て、葉月さんとふたり歩き出す。

彼女は、会社の駐車場に車を置いてきているらしい。私は徒歩通勤だから、途中で分かれ道になる。



「それじゃあ、お疲れさま」

「はい。……いろいろと、すみませんでした」

「気にしないで。また明日、仕事がんばろ」

「……ありがとうございます。お疲れさまです」



そうして踵を返そうとした葉月さんを、ふと思いたって呼び止めた。

こちらを振り向いた彼女に、私は少しだけためらってから、問いかける。



「葉月さんは……三木くんの、どこがすきなの?」



一瞬だけ逡巡したように目を伏せた後、葉月さんはまっすぐに私を見た。



「なんにも、興味なさそうなところ」

「え……」

「ああいうひとに、大事にされてみたいって……思ったのかも、しれません」



軽く一礼し、今度こそ葉月さんはこちらに背を向けて歩き出す。

彼女の言葉を頭で反芻した後、ふうと小さく息を吐いた。


その気持ち……なんとなく、わかるかもしれないって。

少しだけ思ってしまったことは、心の奥にしまっておこう。
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