苦恋症候群
麻智、意外と頑固なところあるんだよなあ。

こっそり頭の片隅で思いながら、言葉を返す。



「別に、私のことは気にしなくてもいいって。麻智、ほんとは文哉さんとも行きたいんでしょ?」

《う……じゃあ、さとりと文哉くんと私と3人で行こう!!》

「なにそれー、私完全に邪魔者じゃない」



突拍子のないその提案に、つい笑ってしまう。

電話の向こうでしばらくうんうん唸っていたかと思ったら、麻智が何か思いたったように口を開いた。



《うん、わかった。つまり、さとりは“3人だけ”じゃないならいいのね?》

「え……いや、うん。まあ、そうなのかな」



や、というか、きみたちがふたりきりで行ってくれればそれでいいんだってば。


私の心の声は、どうやら麻智には届いていないらしい。

なんとなぁく嫌な予感を覚える私に、にっこり笑顔が思い浮かぶような明るい声音で彼女は言った。



《──よし! それなら私に、あてがある!》
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