苦恋症候群
私の同期はもともと15人いたけれど、ちらほら辞めてしまって今は9人だけ。

その中でも彼女、深田麻智とは何かとウマが合い、休日にこうしてよくふたりでランチや買い物に出かけていた。

けどまあ、今回のランチはわりと久しぶりだ。少し前に麻智に彼氏ができてから、しばらくタイミングが合わない時期が続いたんだよね。

さすがに、それで麻智のカレをうらみがましく思ったりはしていない。1回だけ会ったことあるけど、彼氏さんとってもイイ人だったし。


綺麗に磨かれた爪でアイスティーの入ったグラスをいじりながら、麻智がイタズラっぽく笑う。



「さとり、恋人候補に三木くんどお? あんまり愛想振りまくタイプじゃないけど、安心感あるってお客さんにも評判いいよ。それになかなかイケメンでしょー?」

「……無理でしょ。ていうか、彼女いるんじゃない?」

「んーん、今はいないって本人が言ってた」



麻智はそう言うけど、嘘っぽいなあ。ああいういかにもモテそうな男子って、自然とイロメガネで見てしまう。

食後に頼んだいちごスムージーのストローをもてあそびつつ、2日前に見た顔を思い出した。



『なんですか?』



まあ正直、顔は悪くなかった。

背も高いし、細すぎなくて、スーツが映える体つきで……。



『虚しいなって。そう思っただけです』



け、けどアレは、絶対性格悪いと思う!

性格悪いオトコは、いくら見た目良くても私的に論外!!


ぐるぐると勢いよくストローを回す私の心境を知ってか知らずか、目の前で頬杖をつく麻智が苦笑する。



「まあ、麻智の好みは真柴課長タイプだもんねえ。三木くんとはほど遠いか」



彼女が口にした『真柴課長』というワードに、思わず過剰に反応しそうになってしまう。

けれど私はぐっと顎を引いてから、わざとらしいくらいの明るい声を出した。
< 16 / 355 >

この作品をシェア

pagetop