苦恋症候群
「ほんと森下さんって、残念なひとですよね」



こ、ここでまさかの追いうち……。

いやあの、別に、なぐさめが欲しくてしゃべってたわけではないけどさ……。


だけど三木くんは真剣な表情を崩さないまま、「でも」とさらに言葉を続けた。



「さっきのは……ちゃんと、俺の本心です」

「え」



彼が、私と目線を合わせるようにしゃがみ込む。

まっすぐな、少しだけつり目がちなそれに射抜かれて、逸らせない。



「あの男に、あなたはもったいなかった。だからそうやって、自分を卑下しないでください」

「み……」

「森下さんは、やさしすぎると思います。だから、砂糖に群がるアリのごとく、ダメで弱い男が吸い寄せられるんです」



一瞬緩みかけた涙腺が、次の彼の言葉で見事に締まった。

……い、言い方。砂糖に群がるアリって。吸い寄せられるって。


けどまあ、言い方はアレとして……彼なりに私を励ましてくれてるっていうのは、わかったから。

その気持ちが、うれしかったから。
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