苦恋症候群
「ありがとう、三木くん」



三木くんを見つめ、私は笑顔を浮かべた。



「さっきも、今も……三木くんがいてくれてよかった。あの、おでん投げつけたの、スッとしちゃったよ」

「……すみませんね、せっかく楽しみにしてたのに」



ぶっきらぼうに聞こえるその声音は、もしかして照れているからなのだろうか。

言いながら立ち上がって、三木くんは腕時計を確認する。



「あと10分で、花火始まりますよ。どこか座って見れるとこ探しますか」

「あー……ごめん三木くん、私それできないかも」

「は?」



苦笑混じりの私の言葉を聞いて、三木くんが眉をひそめた。

そこでハッと、さっきからずっと下駄の鼻緒を抑えたままだった私の手に視線を向ける。



「もしかして、足……」

「あはは、実は結構前から痛かったんだけどね。走ったらなんか、ひどくなっちゃった」

「ッ、すみません」
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