苦恋症候群
心の中でひとりごち、ビニール袋をドアノブに引っかけようとしたときだった。


ガチャ、といきなりドアが開き、私は反射的に顔を上げる。

ドアの向こうにはいつもより乱れた髪型の、Tシャツにスウェット姿の三木くんが立っていた。



「……森下さん」

「っあ、三木くんごめん……っ寝てたよね?!」

「インターホンの音で起きました……で、メールも今見ました。すみません返信できなくて」



かすれた声でつぶやく彼に、ぶんぶん首を横に振る。



「いいの、私が勝手に送って勝手に来ちゃったんだし。それより、具合だいじょうぶ?」

「……まあ、ぼちぼち……」



そう答えた三木くんの身体がふらついて、とん、と横の壁に肩がぶつかった。

私は慌てて玄関に足を踏み入れ、その身体を支える。



「ちょ、と、とりあえずベッド行こ?!」



しゃべるのもつらいのか、三木くんは何も言わず、されるがままだ。

手を伸ばして鍵を閉め、小さく「おじゃまします」とつぶやいた。

彼の腕を肩にまわすようにしてゆっくり歩き、リビングを抜ける。

ドアが開けっ放しになっていた寝室を進んで、そっとベッドに腰かけさせた。

枕元に置いてあった体温計を取り、彼に渡す。
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