苦恋症候群
不本意にも、数ヶ月ぶりに見た三木くんの素肌。

それに思わずどきりとしながら、彼の言葉を待った。



「……いいんですか、彼氏は」

「へ」

「こんなこと、したら……彼氏に、誤解されるんじゃないですか」

「は、……え、彼氏?」



唐突に彼の口から飛び出した予想外の単語に、私は本気で首をかしげる。

三木くんはつらそうに眉をひそめながら、ちらりとこちらを見上げた。

そこで今日初めて、私たちの視線が絡む。



「昨日……屋上で、電話してたでしょう」

「あ、え、でんわ……ヤス?」

「名前は知りませんけど。仲良さそうに、しゃべって……」

「か、彼氏じゃないよ。ヤスは私の同期。中井川支店の、香田保志」

「は、」



たぶん、名前くらいは知っていたんだと思う。私の言葉を聞いて、三木くんが少しだけ目を見開いた。

ちょっとだけ苦笑しながら、私は続ける。



「ヤスは中学が一緒だったから、幼なじみみたいなものなのかなあ。ていうかアイツ、結婚してるし」

「……家に行くって話、してたのは……」

「ああ、そのヤスの奥さんっていうのも、私の元同期なの。結婚と同時に辞めちゃったんだけど、いまだに同期ぐるみの交流はあるから、また近々会いたいねって話してて」
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