苦恋症候群
ああ、もちろん、家に遊び行くのもひとりじゃないしね。

最後にそう付け足した私の話を聞いて、珍しく不意を突かれたような表情をしていた三木くん。

だけどパッと片手で顔を覆ったかと思うと、そのままうつむいてしまった。



「え、みきく……」

「は……んだよ、それ……」

「え?」



彼がつぶやいた言葉をうまく聞き取れなくて、訊ね返す、けど。

なぜか三木くんは自分の発言にハッとしたような顔をしてから、今度は口もとだけを右手で覆った。

何か思いつめているような、その表情。心配になって、私はまた口を開く。



「あの、三木くん、どうし……」

「……ほんと、学習しないんですね、森下さんって」

「え」



疑問を口にする前に、何の前触れもなく左腕を引かれた。

持っていたおかゆのパックが手から離れて、ラグの上に落ちる。
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