苦恋症候群
「わあいた! 文哉くーん!」



わあって。かわいいなあ、麻智。

思わず苦笑しながら、彼女の後に続いて文哉さんのもとへと向かう。



「お待たせ文哉くん」

「お久しぶりですー、文哉さん」

「麻智、さとりちゃん。こんにちは」



目の前に来た私たちに、そう言って文哉さんはふわりと笑う。


白い麻のシャツに、濃いブルーのジーンズ。

ちょっとゴツめの黒い腕時計に、ふわふわした焦げ茶色の髪。

服装自体はありふれていて珍しくもないのに、この人が着るとものすごくかっこよく見えるから不思議だ。

彼女より3つ年上の、相変わらずのイケメン好青年。そしてイイ声。

麻智も最初は、この声に落ちたって言ってたからなあ。


その麻智は申し訳なさそうに眉を下げ、目の前の彼を見上げている。



「ごめんね文哉くん、待たせちゃって」

「俺のが早く着いたんだって。それに約束の時間までまだ余裕あるし……つーか、どうせ案内してくれるの知り合いだから、そんな気ぃ遣わなくても大丈夫」



そう言って彼は、にこりと麻智に微笑みかけた。

麻智、文哉さんを見つめたままぽーっとなってる。無意識にラブラブオーラ出しまくりで、いつまでも恥ずかしいカップルだ。
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