苦恋症候群
《──もう、ほんとにびっくりしたよ》
「……ん。心配かけてごめん」
そう言って私は、スマホを持つ手を左に持ち替えた。
電話口では相変わらず、麻智が心配そうな声音で話しかけてくる。
《とりあえず、明日からの土日もゆっくり休んでね!! 月曜日も、無理しちゃだめだよ!!》
「うん、ありがと麻智」
画面をフリックして、通話を切る。
腰かけているベッドにスマホを置き、深く息を吐いた。
ゆうべの事件のことがあったから、今日は1日会社を休んだ。
一応、山岸部長には理由を伝えたんだけど……どうやら私が連絡するより先に、三木くんが今朝事務部を訪ねてきてゆうべの話をしてくれていたらしい。
無理しなくていいから、という部長の言葉をありがたく受け取って、久しぶりの有給だ。
そこで日中、私に用があって内線をかけてきた麻智に、電話をとった寺沢課長が私と仲が良い彼女だからと、休暇の理由を教えたらしい。
それから麻智は私を心配して仕事終わりに電話をくれて、今に至る。