苦恋症候群
「や、やじゃないよ。嫌なんかじゃない、けど、」

「……けど?」

「け、ど……」



──三木くんの方こそ、嫌じゃないの?

『嫌い』な私と一緒に帰るなんて、本当は嫌なんじゃないの?


喉まで出かかった言葉を、すんでのところで飲み込む。

自分でそれを口にして……そして肯定されたらと思うと、正直に訊ねることなんてできなかった。

きゅ、と1度くちびるを結んでから、まっすぐに彼を見上げる。



「……うん、ありがとう。お願い、します」



言いきって、私はぺこりとお辞儀した。

うなずいた三木くんが、再び歩き始める。

小走りにその背中を追いかけ、隣に並んだ。


……ごめん、三木くん。

斜め後ろからの横顔をこっそり盗み見ながら、心の中で謝罪する。


ごめんね、三木くん。

きみは私のこと、嫌いなのに。

すきになって、ごめん。
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