苦恋症候群
◆ ◆ ◆
「いらっしゃいませー!」
感じのいい店員さんたちの声を聞きながら、私はお店の中へと足を踏み入れる。
カウンターで注文を済ませて商品を受け取り、きょろきょろと辺りを見回した。
コーヒーの香ばしいにおいが鼻腔をくすぐる、あまり広いとは言えない店内。目的の人物はすぐに見つかって、私はその人が座っている席へと近づく。
「ごめんね、遅れて」
声をかけると、窓の外を眺めていたその人物──葉月さんはこちらを見上げ、小さく笑みを浮かべた。
「いいえ、あたしもさっき来たところなので。お疲れさまです」
「お疲れさま」
言いながら彼女の前にある椅子を引き、テーブルに紙コップを置いてからそこに座る。
数ヶ月前と同じお店の、違う席に腰かけて。そうして私たちは、向かい合った。