苦恋症候群
緊張のせいで、心臓がいつもより速く大きく鳴っている。

膝の上に置いた両手をきゅっと握りしめ、私は顔を上げた。



「あの、葉月さん」

「はい?」



私が呼びかけたことにより、彼女と視線が絡む。

一度言葉に詰まって、思わず不自然な間があいてしまうけれど。こくりと唾を飲み込んでから、再び握りしめる手に力を込めた。



「……私、三木くんのことが、すきなの」



──ああ、言ってしまった。

そう思うのと同時に、テーブルを挟んだ向かい側にいる葉月さんが驚いたように目を見開いた。

なんだか泣きそうになりながらその表情の変化をみとめて、私は視線を自分の膝の上に落とす。


自分自身、気づいてしまったばかりのこの想いには戸惑っている。

だけど、このことを葉月さんに伝えないのは、どうにもフェアじゃない気がした。

彼女はいつも、私にまっすぐぶつかってきてくれた。

そんな彼女に、嘘をつくことはできなかったのだ。
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