苦恋症候群
私は、思ってもみなかった。

出会いは最悪で。真柴支店長のこともあって。


──もう、しばらく恋はできないなって、思っていたのに。



「それと森下さん、言っておきますけど」

「え？」

「あたし実はもう２ヶ月くらい前に、三木さんにはキッパリ振られてるんです」

「……へ」



あまりにもあっさり、しかも笑顔で言われたものだから、一瞬言葉の意味が飲み込めない。

ぱちぱちと数回まばたきした後ようやく思考回路がつながって、思わずその場に立ち上がった。



「えええっ！？　なっ、なにそれどういう……っ」

「ちょっ、森下さん座ってください！」

「……あ」



慌てたような葉月さんの声に周りを見渡せば、ちらほらとこちらに向けられている好奇の視線。

頬が熱くなるのを感じながら、私は大人しくまた椅子へ腰を下ろした。
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