苦恋症候群
ようやく私は頼りになるお姉さんから離れ、美人なその顔をにっこり見上げた。



「ハナさん、いつもほんとにありがと。来月のハナさんの誕生日期待しててよ!」

「ふふ、こっちこそありがと。楽しみにしとくわ」



それじゃお疲れさま~と片手を振りながら、ハナさんは事務部から去って行く。

どうやら今日は、彼女の方が残業らしい。私もひらひらと手を振って、その後ろ姿を見送った。



「そういえば、去年も成瀬主任プレゼント渡しに来てたねぇ。森下さんおめでと」

「おめでと~」

「あっ、ありがとうございます!」



課長たちにお礼を言ったところで、ポケットに入れていたスマホが震える。

ディスプレイを見ると、メールが1通。

その送り主の名前に、一瞬緊張が走るけど。それを表に出さず内容を確認して、再びスマホをしまった。



「それじゃあ、お先に失礼しますね」

「はーいご苦労さまー」



口々に声をかけてくれる同僚たちにぺこりと一礼しつつ、オフィスを出る。

閉じたドアを背に、ひとつため息。そうして私は、廊下を歩き出した。
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