苦恋症候群
……だけど、今だけ。
今だけは、近くにいたい。
きっとこうやって送ってもらうのも、あと少しだ。
あの事件からはもう、2ヶ月も経つのだから……そろそろ、彼を解放してあげなければならない。
一緒に帰るといっても、ぽつぽつ言葉を交わしながら、あくまで間に人ひとり分のスペースをあけたまま並んで歩くだけ。
……それでも、うれしい。
うれしいと思ってしまうから、この“約束”を手放せなかった。
「三木くん、すごい完全防備だね」
隣を歩く三木くんをしげしげと見上げながら、思わず私はそう漏らす。
彼はグレーのPコートに黒いマフラーと手袋をはめ、そしてさらには、ふわふわした耳あてまでつけていた。
三木くんは前を向いたまま、ちょっとだけ拗ねたような表情をする。
「寒いの、苦手なんです」
「ふふっ、そうなの」
小さく笑ったら、ますます彼は拗ねたようにくちびるを結んだ。
こうした一面を知れただけでも、自分の気持ちを自覚した今となっては、たまらなくいとしい。
今だけは、近くにいたい。
きっとこうやって送ってもらうのも、あと少しだ。
あの事件からはもう、2ヶ月も経つのだから……そろそろ、彼を解放してあげなければならない。
一緒に帰るといっても、ぽつぽつ言葉を交わしながら、あくまで間に人ひとり分のスペースをあけたまま並んで歩くだけ。
……それでも、うれしい。
うれしいと思ってしまうから、この“約束”を手放せなかった。
「三木くん、すごい完全防備だね」
隣を歩く三木くんをしげしげと見上げながら、思わず私はそう漏らす。
彼はグレーのPコートに黒いマフラーと手袋をはめ、そしてさらには、ふわふわした耳あてまでつけていた。
三木くんは前を向いたまま、ちょっとだけ拗ねたような表情をする。
「寒いの、苦手なんです」
「ふふっ、そうなの」
小さく笑ったら、ますます彼は拗ねたようにくちびるを結んだ。
こうした一面を知れただけでも、自分の気持ちを自覚した今となっては、たまらなくいとしい。