苦恋症候群
「──ああ、もう、こんな時間なんですね」
ふと、リビングの壁かけ時計に目を向けた三木くんがつぶやく。
つられて私もそちらを見てみると、時計の針はもう22時を指そうとしていた。
「すみません、こんな時間まで。そろそろ帰りますね」
「あ、うん……あっ、別にそのままにしといていいよ!」
乱雑に置かれていたボトルや梅酒のパックをひとまとめにしてくれる三木くんを、慌てて制する。
缶はビールが2、3本だけだから、もともとそんなに散らかってもいない。何より、お客さんにそんなことさせられない。
そう考えてその手を止めたんだけど、なぜだか三木くんは、不機嫌そうにむっと口を真一文字に結んだ。
前にも思ったけれど、三木くんはお酒が入ると、いつもより表情豊かになる。
あくまで“いつもよりは”、だけど。
「えっと、三木くん?」
「……俺、森下さんの誕生日なのに、何もできてません」
「え……ええ? そんな、だって、こうやって一緒に飲んでくれてるじゃない」
「こんなの、俺が楽しいだけです」
あまりにもさらりと放たれた言葉に一瞬思考が停止して、思わず持っていた缶を落としてしまった。
三木くんはそんな私に構うことなく、なぜかテーブルの上のボックスティッシュから1枚取り出すと。何やら、手際良く折り始める。
ふと、リビングの壁かけ時計に目を向けた三木くんがつぶやく。
つられて私もそちらを見てみると、時計の針はもう22時を指そうとしていた。
「すみません、こんな時間まで。そろそろ帰りますね」
「あ、うん……あっ、別にそのままにしといていいよ!」
乱雑に置かれていたボトルや梅酒のパックをひとまとめにしてくれる三木くんを、慌てて制する。
缶はビールが2、3本だけだから、もともとそんなに散らかってもいない。何より、お客さんにそんなことさせられない。
そう考えてその手を止めたんだけど、なぜだか三木くんは、不機嫌そうにむっと口を真一文字に結んだ。
前にも思ったけれど、三木くんはお酒が入ると、いつもより表情豊かになる。
あくまで“いつもよりは”、だけど。
「えっと、三木くん?」
「……俺、森下さんの誕生日なのに、何もできてません」
「え……ええ? そんな、だって、こうやって一緒に飲んでくれてるじゃない」
「こんなの、俺が楽しいだけです」
あまりにもさらりと放たれた言葉に一瞬思考が停止して、思わず持っていた缶を落としてしまった。
三木くんはそんな私に構うことなく、なぜかテーブルの上のボックスティッシュから1枚取り出すと。何やら、手際良く折り始める。