苦恋症候群
今度は、私が目を見開く。
「……なんで」
「え」
「なんで……あんたが“それ”を、言うんだ」
しぼり出すような、うなるような、震えた低い声。
それは怒っているようにも、絶望しているようにも……泣いてしまうのを堪えているようにも、聞こえた。
さっきまで笑い合っていたのが、嘘みたいだ。何も言葉を返すことができない私に構うことなく、三木くんは今度こそ立ち上がった。
壁にハンガーで吊っておいたジャケット、それからその真下に置いていた自分のカバンを手に取って、振り返ることなく玄関へと向かう。
バタン、とドアが閉まる音が聞こえてきても、私は床に仰向けになった体勢のまま、身動きがとれなくて。
……なんて、馬鹿なことをしたんだろう、私。
『嫌い』とハッキリ言われている人に、わざわざ自分から告白するなんて。
じわりと、目もとが熱くなる。
「っう、ぅあ……っ」
だけど、どうしてかあのときだけは、彼に気持ちを伝えてもいいのかもって思ってしまった。
彼の指先や、眼差しのやさしさが。自分だけのもののような気が、してしまったの。
次から次へと溢れてくる涙を、床に転がったまま必死で拭う。
これでもう、確定だ。
今度こそ私……決定的に、失恋してしまった。
「……なんで」
「え」
「なんで……あんたが“それ”を、言うんだ」
しぼり出すような、うなるような、震えた低い声。
それは怒っているようにも、絶望しているようにも……泣いてしまうのを堪えているようにも、聞こえた。
さっきまで笑い合っていたのが、嘘みたいだ。何も言葉を返すことができない私に構うことなく、三木くんは今度こそ立ち上がった。
壁にハンガーで吊っておいたジャケット、それからその真下に置いていた自分のカバンを手に取って、振り返ることなく玄関へと向かう。
バタン、とドアが閉まる音が聞こえてきても、私は床に仰向けになった体勢のまま、身動きがとれなくて。
……なんて、馬鹿なことをしたんだろう、私。
『嫌い』とハッキリ言われている人に、わざわざ自分から告白するなんて。
じわりと、目もとが熱くなる。
「っう、ぅあ……っ」
だけど、どうしてかあのときだけは、彼に気持ちを伝えてもいいのかもって思ってしまった。
彼の指先や、眼差しのやさしさが。自分だけのもののような気が、してしまったの。
次から次へと溢れてくる涙を、床に転がったまま必死で拭う。
これでもう、確定だ。
今度こそ私……決定的に、失恋してしまった。