苦恋症候群


「納得できません」



自分の正面、テーブルの向こうでこわい顔をする後輩に、私は若干おののいて身体をすくめた。

片手に持っていたアセロラサワー(コラーゲン入り)のグラスをコン!と勢いよくテーブルの上に置き、彼女はアルコールのせいか据わった目を再び向けてくる。



「『すき』の答えが『なんでそれを言うんだ』って、三木さんこそ何言ってんですかそれ。しかもそのままハッキリした返事もせずにトンズラって、もうアホですか」

「ちょ、葉月さん落ち着いて……」

「やーもう私なんてさとりが三木くんに恋してたことすら知らなかったからね! なにそれ私同期なのに!! ちくしょーさみしいわちくしょー!!」

「あの、麻智もちょっと静かに……」



リーズナブルで特に女性に人気なこの韓国料理店は週末ということもあって客入りが多く、周りはガヤガヤと騒がしい。

……とはいえ、一応ここは公共の場だ。

ピーチサワー(コラーゲン入り)のグラスを握りしめたままテーブルに突っ伏す麻智を宥めると、逆に私がキッと睨まれた。


私から見て、葉月さんの左隣に座っている麻智。

酔っているせいか熱っぽくとろけながら、それでもやけに迫力のあるその視線にたじろぐと、麻智はずいっと私の方に身を乗り出してきた。



「なによなによ、美礼ちゃんには相談してたのに、私には言ってくれないなんて……! グレてやるうううう」

「あ、あぶなっ、麻智お鍋危ないお鍋!」

「三木遥のお馬鹿ー!! 人でなしー!!」

「葉月さんそんなこと叫んじゃダメっ!」
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