苦恋症候群
テーブルの真ん中には、ぐつぐつ熱い湯気をたてているタジン鍋がある。

だというのにお構いなしで麻智が私に掴みかからんと手を伸ばしてくるもんだから、慌ててその手を押さえた。

そしてそっちに気をとられていると、普段は落ち着いた性格なはずの葉月さんが背もたれにぐでーんともたれながら子どもみたいにあらぬ暴言を吐いていて。

か……カオス……! 誰か助けて……!


そしてそもそもなぜこのメンバーが、葉月さんお気に入りのこのお店で、タッカンマリ女子会コースに舌鼓を打っているのかといえば。



「えっ、さとりって葉月さんと最近仲良しなの?! わ~私もお近づきになりたい!! かわいい子大好き!!」


という麻智の発言と、



「あたしはもう綺麗さっぱり三木さんに未練ないので、いくらでも森下さんの話聞けますよ。さあ、遠慮なく恋バナどうぞ!」



という葉月さんの発言により、特にこれといった弊害もなく決行されるに至ったのだ。

そしてこの場を設けて、初めてわかったこと。



「えへへへ美礼ちゃん、私前からお話してみたかったのー! さとりなんかほっといていちゃいちゃしよぉよー」

「ダメですよう麻智さんー。まずは三木くそ野郎さんと森下さんをいかにしてくっつけるか考えなければ……うえええ海鮮チヂミおいしー!」



麻智も葉月さんも、揃って酒癖が悪い……!

なんなのこのコたち!! 見た目かわいいコンビなくせに、酔い方めんどくさい!!!

ひとりテーブルの反対側でドン引きする私に対し、お互い自分の言いたいことを言ってやりたいようにしている麻智と葉月さん。

誰か助けて。切実に。
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