苦恋症候群


◆ ◆ ◆


その日は、朝から雪が降っていて。

昼近くまで降り続いたそれは氷点下近い気温で溶けることなく、辺りを真っ白な世界に染めていた。



「それじゃあこれ、お願いします」

「はーい。森下さんご苦労さま」



今日は休日返上で、信金協会が主催する試験が行われている。

試験内容としては、金融機関で働くうえでの基礎知識と、預金や融資、年金などいろいろなジャンルに関する問題が、まんべんなく出題されるもの。

年に1度、本部の会議室を会場にして、配属する支店や勤続年数関係なく、希望者が任意で受けることができるのだ。

まあ実際は、受験者数を集めなきゃいけない関係があるのか、もともと希望してなかった人にも人事部からお誘いの内線が来たりするんだけど。


試験時間は1時間と決まっているけれど、30分を過ぎた時点で終わった人から退出することができる。

私も45分を過ぎたあたりで席を立ち、部屋の前方で待機していた人事部副部長に解答用紙を手渡した。

そっとドアを閉めて、廊下を歩きながらスマホを確認する。

画面に表示されているお知らせは、新着メールが1件。
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