苦恋症候群
……手、綺麗。というかこのコ、タバコ吸うのね。

物憂げにぼんやりとどこか遠くを見つめる表情も、なかなかのイケメンだ。でもなんとなく、その横顔は疲れているようにも見える。

やっぱり異動したての頃は、新人のときみたいに気疲れするよねぇ。



「ど、どう? 審査部は」



同じ空間にいるのにずっと知らんぷりもなんだかできなくて、私はおずおず、そう訊ねてみた。

こちらに顔を向け、意外にも彼は、普通に受け答えをしてくれる。



「そーですね。まあ、ぼちぼちなんとかやってます」

「あ、こないだ麻智……深田さんが、三木くんのこと仕事できる人だって褒めてたよ」

「ああ、同期なんですよね、おふたり」



普通だ。普通の会話、あの三木くんとできてる。

私はなんだかうれしくなって、さらに話しかける。
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