苦恋症候群
「三木くん……あの」

「……なんですか?」



話を促す彼の声音は、雪のように冷たい。

そんな三木くんの態度に、ずきりと胸が痛む。

けれどまた1歩、彼に近づく。



「……どうして、ちゃんと、振ってくれないの」

「………」

「私のこと、嫌いなら……前みたいにそう言って、キッパリ振ってくれればいいのに」



はあっと、白い吐息が風にさらわれて消える。

三木くんは、動かない。ただ、その手袋に隠れた両手を、ぎゅっと強く身体の横で握りしめている。

また、1歩。今度は、手を伸ばしたら届く距離まで近づいた。



「ねえ三木くん、どうして──」

「ッ、うるさい……!!」



冷たい空気を切り裂くその怒号に、びくっと身体が震えた。

決してこちらを振り向いてはくれないまま、彼が続ける。



「あんた、どんだけ自分のこと苛めたいんだ? わざわざ、そっちから話しかけてくるなんて」

「……三木く、」

「今さら俺の口から言わせなくても、答えはわかってんだろ。もう、俺に関わるな──」

「ッ、わかんない……!」



彼の言葉をさえぎって、私はその腕を掴んだ。

驚いたようにこちらを振り向いた三木くんと、ようやく目が合う。

涙でにじみそうになる視界で必死に目を凝らしながら、私は彼を見上げる。
< 260 / 355 >

この作品をシェア

pagetop