苦恋症候群
いつからか、窓の外ではまた雪が降り始めていた。



「三木くんは、いつだって涼しい顔で、なんでも器用にこなしてみせるから。だから、誰の助けなんかもいらないし……やりきれなくてもどかしい思いをすることなんかも、ないと思ってた」



私がぽつぽつと勝手に聞かせる話に、三木くんが少しだけ不思議そうに視線を上げる。

その手に握られたマグカップを見つめながら、小さく笑みを浮かべて私は続ける。



「でも、違うんだよね。三木くんも私たちみたいに、悩んだり苦しんだり……どうしようもない現実を嘆いたり、してるんだよね」



三木くんは黙ったままだから、私の話に何を思っているかはわからない。

それでも、続けた。



「ねえ、三木くん。三木くんが、話したくないと思ってることは、無理やり聞き出そうと思わないよ。三木くんの悩みとか、それに対して出した結論は……三木くんだけの、ものだもん」



でも、ごめんね、これだけは聞いて。

一方的な、私のワガママだけど。これだけは、知っておいて。
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