苦恋症候群
「私は、三木くんがすきです。あなたは前に、『自分はしあわせになる資格がない』って言ったけど……私は、自分のすきなひとには、しあわせになってもらいたい。すきなひとが悩んだり、苦しんだりしていることは……少しだけでも一緒に背負って、少しでも、軽くしてあげたい」



微笑みながらそう言うと、目の前の三木くんは息を呑んだ。

馬鹿なことを言っているのかもしれない。それでも、伝えずにはいられない。



「嫌いでもいいから。都合よく使ってくれて、構わないから。だからいつか、ユキヒさんの話をしたいときや……辛くてどうしようもないときは、私のことを思い出して欲しい」



ごめんね、諦め悪くて。

だけどこれが、今の私の精いっぱい。

無理やり知ろうなんて、思わないから……だからせめて、いつか気が向いたときの捌け口として、きみの中に残りたい。



「いろいろ踏み込んじゃって、ごめんね。もう、帰ります」



ふにゃりと苦笑しながら立ち上がって、私は自分のバッグを手に取る。

自分の言葉は、押しつけがましくなかっただろうか。たった少しでも、気を楽にすることはできただろうか。

そんなことをぐるぐる考えながら、彼に背を向けたそのとき。
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