苦恋症候群
溢れ出す涙が、彼女の頬に落ちた。そのまま伝って、地面に染みを作る。

いつの間にか灰色の空からまた、はらはらと雪が降り始めていた。



『だってさ、“雪”はあたしと同じ名前だから、味方って気がするんだよ』



ああ、そうか。──なら。



「ッ雪妃……!!」



なら、俺にとっての“雪”は、罪の証そのものだ。

『オマエナンカ シアワセニナレナイ』。

『オマエナンカニ シアワセニナルシカクハナイ』と。

やさしかった雪妃とは裏腹に、俺を糾弾して貶める。彼女の、分身だ。


そうして俺はその日、誓ったのだ。

この罪を、償うために。もう二度と、自分のためのしあわせなんか、望まないと。
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