苦恋症候群
「ねぇ、三木くん」

「はい」



ここは会社で、今は勤務時間中で。だけど私たちふたり、明るいお日様の下でだらだらと話し込んでいる。

ここだけ、日常から切り取られたみたい。



「こないだ、自販機のところで……私に『虚しいですね』って、言ったじゃない?」

「あー、言いましたね」



……容赦ないなあ。


遠慮なくうなずいた彼に、思わず苦笑する。

私は、手すりにもたれていた身体を起こした。



「それ、具体的にさ。どういうところが、『虚しい』って思う?」

「え」



その問いが予想外だったのか、三木くんはちょっぴり、驚いたように目をみはった。

だけどすぐ、さっきまでと同じクールな無表情に戻る。



「なんですか、森下さんドMですか」

「ど、……いいから、言ってみて」



食い下がる私に、少しだけ考えるような素振りを見せる。

そして彼は前を向いたままタバコをひとくち吸って、ふーっと、白い煙を吐き出した。
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