苦恋症候群
「ちょ……っ森下さん!!」



後ろから、私を呼ぶ声が追って来る。

いや、声だけじゃない。猛然と階段を駆け上がる私と同じように、三木くんもまた、階段を駆け足でのぼってきている。


な、なんで追いかけてくるの……??!

おののきながらも私は学生時代に陸上部で鍛えた脚力を駆使し、全速力で階段を上がっていく。

スカートだけど、そんなの気にしてられない。すれ違う職員たちが、何事かと目を丸くして私たちを振り返った。

その視線にも構わず、ただ上へ上へとのぼっていく。


……そして。



「っはあ、はあ……っ」



息を切らしながら、屋上の重たい鉄の扉を開ける。

そうして外に出た瞬間、左手首を後ろからがしりと掴まれた。

そのまま引っぱられて、屋上の壁に身体を押しつけられる。

バタン、とすぐ横で、扉が閉まった。
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