苦恋症候群
「遥くん、文哉さんと何か予定あるの?」



駐車場に着いて、彼の車に乗り込む。

シートベルトを締めながら訊ねると、遥くんは口角を上げた。

その表情を見て、ちょっとだけ身を引く。


……あ、この笑い方は。

彼が何か企んでいるときの、笑い方だ。



「俺っていうか。さとりも一緒だよ」

「え」

「部屋探しとか、就職したとき以来だから7年ぶりだなー」



なんでもないように言いながらエンジンをかけるから、思わず固まった。

……部屋探し? え? 文哉さんのとこで?

え? 私も一緒?


…………もしかして、一緒に住むの?



「ぅえっ、ちょ、は、はやっ、」

「早くない。ずっとすきだったんだから、俺はいつ結婚してもいいくらい」



ハンドルに両手を預けて寄りかかりながら、私の方を見てにやっと笑う。

かーっと、顔が熱くなった。
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