苦恋症候群


◆ ◆ ◆


「……ふぅん。意外と、カノジョの物とか置いてないんだ」



綺麗すぎず、かといって散らかっているわけでもなく。

そんな遥の部屋を見回しながら、ぽつりとつぶやく。

この春大学生になった彼は、進学と同時にひとり暮らしを始めた。

そして2ヶ月ほど前に、同じ大学の彼女ができたらしいから……それを意識して、思わず漏れた言葉だった。


何やら冷蔵庫の前でごそごそやりながら、「あー、」と、遥が口を開く。



「まあ、彼女まだウチに来たことないし」

「そうなの?」

「彼女の家の方が、大学に近いんだよな。だからそっちばっか行ってる」

「へぇ」



そっけない返事をしながらも、内心は彼女のことが気になって仕方ない。

そわそわしているあたしのことなんかちっとも気がつかずに、テーブルの上に買い物袋を置いた遥が無邪気に笑った。
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