苦恋症候群
ベッドから遥の穏やかな寝息が聞こえてから、もうしばらく経って。

あたしはゆっくり、ふとんの上で身体を起こした。


掛け布団を握る自分の手が、小刻みに震えている。

自分を叱咤するように、1度ぎゅっと、きつく目を瞑ってから。そっと、ふとんを抜け出した。


すやすやと眠る遥の寝顔を少しの間眺めてから、その掛け布団を床に落とす。

小さく軋んだ音をたてて、遥の眠るベッドに上がった。


そして──……。



「え……ゆき、ひ……?」



静かにくちびるを合わせると、気づいた遥が目を覚ました。

自分にまたがるあたしの姿をみとめて、驚いたように声を漏らす。



「……ごめんね、遥」



ダメなお姉ちゃんで、ごめん。
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