苦恋症候群
「三木くん」

「なんですか」



一応返事はするくせに、こっちを向いてはくれない。

やっぱり私は苦く笑って、また口を開く。



「三木くん、これから先も、しばらくここ使いたいよね?」

「あー、そうですね」



異動に慣れるまでの間、やっぱり疲れが溜まることは多いだろう。

つまり、三木くんがタバコを吸いたくなる。けど、あまりそれを誰かに見られたくない。


……なら。



「それじゃあ私、しばらくここ来ない方がいい?」



それをわざわざ本人に訊ねたのは、なんとなくの、気まぐれだった。

だって私の方が先輩で、しかも以前からここを利用していたんだから、こっちがそこまで気を遣う必要はないのだ。

だけど、なんとなく。なんとなく、彼がどう答えるのか気になって。

つい、そんなことを口にしてしまった。
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