苦恋症候群
でも、もう、苦しいの。

苦しくて、切なくて、たまらないの。

もう、ガマンできないの。

行き場のない想いは、重たくて。もう、この先少しだって、抱えられそうにない。



「……遥、あたしを抱いて」

「え、」



彼の顔の両脇に手をつきながら言ったそれに、遥が目を見開く。

その綺麗な首筋を、そっと撫でた。



「1回だけで、いいの。1回だけ、抱いてくれたら……それを思い出にして、あたしはこの気持ちを、封印できると思うから」

「ゆ、きひ」

「お願い、遥。あたしを、“姉”じゃなくて……っ“女”として、扱ってよ……っ!!」



涙を浮かべながら“弟”にすがりつく今の自分の姿は、傍から見たらなんて滑稽なんだろう。

でもね、ダメなんだ。やっぱりあたしは、きみじゃなきゃダメだったみたいなの。

遥のことを忘れなきゃって、他の男の子と付き合って身体を重ねたりもしたけれど、やっぱり無理だった。

きみにしか、あたしのこの心は、救えないの。
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